乳幼児がお腹が痛いと訴えるとき、どのように対応したらいいでしょうか。
赤ちゃんは言葉で伝えることができませんし、幼児でも胸の痛みや耳の痛みを腹痛と間違えて「お腹が痛い」と言うことがあります。
ですから、大人がそのあたりの事情をよく理解して判断する必要があります。
ここでは、子供特有の腹痛を伝える手段と腹痛の症状を理解し、それにどのように対応したらいいかを説明します。
さらに、注意しなければならない「緊急性のある腹痛」についても説明します。
乳幼児が腹痛を伝える手段
1.乳児・話せない幼児は機嫌と動作に注意
言葉で伝えることができないため、おなかが痛い場合に「動作」や「しぐさ」で合図を送る場合があります。
乳幼児が急に激しく泣き出し、あやしてもミルクを与えても泣きやまない」ときは、便秘や腸重積などが考えられます。
また、腸重積のときに、痛みを和らげるために膝をおなかの方に引きつける動作を取ったりします。
2.言葉で伝えられる幼児でも、訴えだけでなく体全体をよく観察
うまく表現できない子どもは、おなかが痛い場合に「動作」や「しぐさ」で合図を送る場合があります。
歩いているときには、しゃがみ込んで腹痛を訴えることがあります。
痛みに対して不安になり、おとなに甘える子どももいます。
乳幼児の腹痛の症状と対応
子供の腹痛の原因と症状の主なものは以下の通りです。
1.便秘症(30~40%)
・子どもの腹痛で最も多いのが「便秘症」です。
・便が出ているかどうか?、最後に出たのはいつか?、子どもに聞いてみることが大切です。
・おなかを優しく触ると、左下にころっと硬くなった便に触ることがあります。
その場合は、浣腸が効果があり、痛がっていたのがうそのように元気になる事がほとんどです。
・便秘に対する対応は、かかりつけの医師と相談しながら、子どもに合った方法を見つけましょう。
2.感染性胃腸炎(15~20%)
・細菌やウイルス、寄生虫が口の中に入り、感染する
(ロタウィルス、ノロウイルス、サルモネラ菌等)
・おなかが痛くなって嘔吐し始め、その後、下痢便が出ます。
下痢と嘔吐が続くと脱水症状を起こし、重症化する恐れがあります。
おかしいと気づいた時は早めに病院で受診しましょう。
・一定の期間を置かないと、学校や特定の職場に復帰することができません。
3.かぜ症候群(10~20%)
風邪をひいたとき、熱が上がる前におなかが痛くなる子どもが多くいます。
中耳炎を合併しているときも、よく腹痛を訴えます。
4.心因性腹痛
何となくおなかが痛いという場合で、「心因性腹痛」であると見極めるのが難しい病気です。
睡眠不足も原因の一つなので、生活を見直してみましょう。
5.腸重積
・生後3ヶ月から2歳までの子どもに突然発症する腸の病気で原因ははっきりと解明されていません。
・腸の中に腸が押し込まれた状態になり、食べた物が腸内に詰まり腸が締めつけられた状態に陥ります。
長時間締めつけられた腸は、血液をスムーズに流すことができず、やがて出血を引き起こします。
さらに時間が経過すると、腸全体が壊死してしまい、腹膜炎などの重篤な病気を併発する恐れも懸念されます。
・お腹の右上に細長くて固いしこりが見られる場合があり、そっと触ると、極度に痛がったり泣きだす場合は、腸重積の疑いが強いといえます。
さらに症状が進行すると、血便が出るようになります。
腸重積が重症化する前に、子どもの異変に気づいたらすぐに専門の医療機関を受診しましょう。
また、脱水症状をおこしていることも考えられるので、こまめな水分を与えること。
・腸重積は、いったん発症すると進行が早い病気で、わずか2~3日で血便が出るまで重症化してしまうので注意が必要です。
しかし、発症から24時間以内なら、高圧浣腸などの治療方法で症状を劇的に改善することができるといわれています。
このように、腸重積は早期の発見と診断が治療のカギを握っています。
6.虫垂炎などそのほかの外科的な原因
子どもの虫垂炎は診断が難しく、破れて腹膜炎を併発しやすいので非常に怖い病気です。
乳幼児の腹痛の判断方法
1.子供が訴える痛みの程度を判断する
我慢できる程度か、我慢できないほどなら緊急で医療機関を受診すること
2.熱があるか
3.咳・鼻水など風邪の症状があるか
4.便が出ているか
出ていれば便の状態をチェックする
・下痢便:急性の胃腸炎
・血が混じっている時:腸重積が考えられる
→お腹が張っていれば緊急性があります
5.呼吸状態をチェックする
ゼイゼイという呼吸音があるときはぜんそくの場合があります
呼吸がはやいときはぜんそくや肺炎のことがあります
6.痛みは軽いが、繰り返し痛みを訴える
・心理的問題があることが多い
・親や友達との関係が原因でお腹が痛くなることがある
→痛みが強くなれば緊急性があるのですぐに医療機関を受診する
・心理的な問題が原因の場合は、スキンシップが大切
抱いてあげたり、手を握ったりして安心させる
話しかけて、親が子供に注目していることを伝える
特に緊急性のある腹痛
実際に腹部に病気があるときの痛みは、緊急性のある場合が多くあります。
上記の腹痛の中で、特に緊急性のあるものは・・・
① 腸重積
② 感染性胃腸炎
③ 虫垂炎
これ以外でも、子供がとても痛がる場合など、様子がおかしいと感じた時はすぐに専門医の診断を受けましょう。
まとめ
言葉で自分の痛みを伝えられない子供は、何らかの形でメッセージを発しています。
子どもの微妙なメッセージは、日頃の子どもとの付き合いから分かるものです。
「いつもと違う」と感じる感覚を育てることは、とても大切です。
おなかだけでなく他の原因の場合もあるので「おなかだけ注目しないで」少し離れて全体を観察することも必要です。
伝えきれない子供の訴えを、細心の注意を払ってしっかりくみ取ってあげましょう。