お子さんが喘息の発作を起こしたとき、ひどくならずに少しでも早く治まってほしいと思いますよね。
そのために普段から家族はどうすればいいのでしょうか。
ここでは、まず喘息の原因を理解して、喘息を予防するには家族はどうしたらいいかを考えます。
子供の喘息の原因
子供がぜんそくを起こす原因には、いくつかの要因が考えられます。
1.原因となる物質(アレルゲン)に触れて喘息が発症
ふつうの人にとっては何ともないものが喘息の原因となります。
アレルゲンは人によって異なります。
室内では、ダニ、ほこり、カビ、動物の毛など
室外では、花粉、昆虫などがあります。
ダニなどのアレルゲンが身体に入ると、気管支で慢性的な炎症が起き、気道がとても過敏になります。
そして、上記の要因が重なって気管支の炎症が強くなり、喘息症状を繰り返すようになるのです。
アレルギーの症状や原因は、生活環境や年齢によって変わっていきます。
たとえば、赤ちゃんの時に卵アレルギーでアトピー性皮膚炎だったものが、年齢が上がるにつれてダニアレルギーを発症し、気管支喘息を起こすこともあります。
2.アレルギー以外の原因
アレルギー以外にも喘息を悪化させる要因があります。
・ウイルス感染、大気汚染、周りに喫煙者がいる、ストレスなど
・運動によって息が上がり、それがもとになる
・季節の変わり目に気候が急に変わるときにも発症しやすくなります
3.遺伝など
家族や兄弟に喘息を持っている人がいると、発症する確率が高くなります。
両親に喘息などがあるお子さんはリスクが3~5倍になります。
また、アトピー性皮膚炎の子供も喘息の発生頻度が高くなることがわかっています。
室内環境の改善(アレルゲンを減らす)
子供のぜんそくの原因の大半はアレルギー反応です。
まずは、身近なアレルゲンを減少させることが重要です。
室内環境の整備は家族の協力が必要ですが、この問題を改善することでぜんそくが良くなった例も多いので、今すぐにでも実行しましょう。
ここでいうアレルゲンとは、ぜんそくの原因になりうる吸入性のアレルゲンです。
アレルゲンには、以下のようなものがあります。
・室内のホコリの中には様々な種類のダニが生息しています。
特にチリダニという種類はぜんそくの原因種で普通の家庭で最も多く検出され、人の垢やフケ、食品などを餌としています。
・他にはネコ、イヌなどのペットの毛、室内のカビ、外から持ち込まれる花粉、タバコの煙などです。
またダニが好む湿度は75%前後、カビは70~90%です。
ダニ・カビは乾燥に弱いので、清掃と換気をしっかり行うことが大切です。
梅雨の時期等、湿気の多い季節には十分に気をつけましょう。
① 布団カバーなどの洗濯
深夜から明け方が発作が起こりやすいので、寝具からダニを遠ざけましょう。
毎日使う寝具(布団カバーやシーツ、枕カバーなど)はこまめに交換、洗濯してください。
ダニのアレルゲンは水に溶ける性質があるので、寝具や衣類などの洗濯はアレルゲン除去に効果があります。
こまめに布団を干して、週に一回は掃除機をかけましょう。
外に干した寝具は取り込む前に必ず花粉を払ってください。
素材でアレルゲンをガードする方法もあります。
最近ではダニや花粉、ホコリをシャットアウトする高機密な素材や超極細繊維のシーツ、枕カバーなども販売されています。
素材からガードすることはかなり有効な対策といえますので、ぜひ検討してください。
② 部屋の床の材質と掃除
じゅうたん、ラグなどはできるだけ取り除き、可能であればフローリングにし、できるだけ毎日床に掃除機をかけましょう。
ていねいに掃除機をかければほとんどホコリはたまりません。
注意したいのは、床に落ちたホコリや花粉を掃除機がけの際に舞い上げてしまうことです。
床掃除を普通の掃除機で行う場合は、先にシートやぬれ雑巾で拭き掃除をしておくと掃除機をかける時に舞い上げの心配が少なくなります。
また床以外に室内照明の傘の部分やタンスの天板などもホコリがたまりやすいので、時々徹底した拭き掃除をしてください。
できれば排気がきれいな掃除機やゴミ捨ての際にホコリが舞い散らないタイプの掃除機などを選ぶとよいでしょう。
畳にじゅうたんを敷くパターンは一番アレルゲンを保持しやすい環境になりますからすぐにやめましょう。
タンスやベッドと壁のすきまにもダニやほこりがたまりやすいので、タンスやベッドなども月1~2回移動して掃除機をかけてください。
③ 家具、カーテン
洗濯のできない布製ソファーにはダニがたくさん住み着いているので、できれば合成皮革製に変えることをお勧めします。。
ホコリっぽいカーテンは洗濯するか、ブラインドに付け替えましょう。
④ ぬいぐるみを清潔にする
子どもが大好きなぬいぐるみにもダニがたくさん住みついています。
できればホコリやダニの付きにくい素材を選ぶか、 洗えるものなら中性洗剤で丸洗いすれば大丈夫です。
防ダニ性のぬいぐるみもあります。
⑤ ペットを飼うときの注意
ネコやイヌなどの有毛動物がアレルゲンになることがあります。
家の中で飼うことが多いので、新たに飼うことは避けた方が良いでしょう。
現在飼っているペットについては家の外で飼ったり、症状がひどい場合は近くの知り合いにあずかってもらうなど対策を立てましょう。
喘息に影響がないペットは、水槽で飼えるカメ、金魚や熱帯魚です。
これらはアレルギーに悪影響を与えません。
とにかく、喘息の原因になるものを近づけないように努力しましょう。
⑥ 室内の空気を清潔にする
室内の空気をきれいにすることで、空気中にただようアレルゲンや浮遊物を減少させます。
対策としては空気清浄機の使用をお勧めします。
空気清浄機にはファンフィルター方式とイオン方式、ファンイオン方式がありますが、粒子状の物質に対してはファンフィルター方式がより有効と言われています。
最近ではホルムアルデヒドなどの化学物質に対し、光触媒作用を利用して酸化除去する空気清浄機もあるようです。
⑦ エアコン使用時の注意点
エアコン使用の際、フィルターが汚れたまま使用していると空気中にホコリをまき散らしてしまいます。
定期的にフィルターを掃除して使用してください。
⑧ タバコの煙
タバコを吸う人の煙はもちろん、タバコの先から立ち上る煙や灰皿のくすぶった煙は、有害物質を含んでいるのでぜんそくを悪化させる要因となります。
タバコの煙は吸入ステロイドの効果を弱めるため、家族にぜんそく患者がいる場合は室内の喫煙をやめてください。
腹式呼吸の練習
胸式呼吸だと肺に空気がたまるので、発作時に呼吸がひどくなります。
発作時に腹式呼吸ができると呼吸が少し楽になることもあります。
(子供は、2、3歳頃までは腹式呼吸をしていますが、それ以降は次第に胸式呼吸が多くなります)
もしものときにスムーズに腹式呼吸ができるように、練習をしておきましょう。
腹式呼吸の練習法
① おうちの人が子供の胸とお腹に手をおく
②「吐いて、吐いて、吐いて、吸って」と言ってお腹で息をする
最初は息を吐かすようにしましょう。
空気を吐くときは、お腹の筋肉に力を入れて、空気を吸うときは、お腹の筋肉をゆるめてお腹を膨らませて、自然に空気が肺に入ってくることを覚えましょう。
急な発作のために準備しておくことは?
•発作の程度を把握できるようにしておく
今の症状がどの程度で、どのような対処をしなければいけないかを判断できるように予備知識を持っておきましょう。
発作の詳しい説明はこちら子供の喘息の原因と症状は?発作時に楽にしてあげる方法は?
•いつも飲んでいる薬の名前と量をメモに残しておく
•主治医と急な発作の時の対応を相談して、薬が処方されれば、薬の名前と量と使用するタイミングをメモに残しておく
•休日や夜間でも受診できる医療機関をあらかじめ探しておく
・必要なら吸入器を用意しておく
その他気をつけること
1.ぜんそくの子どもの食事で気をつけること
食物アレルギーが合併している場合以外は栄養のバランスがとれている食事をすることが大切です。
但し、食べすぎでぜんそくが起きる人がいるので注意しましょう。
また、発作時は無理に食べさせることのないようにします。
2.学校や幼稚園、保育園等の行事でお泊りをするときの準備・注意点
・毎日のお薬を欠かさないこと
・ホコリに気をつけること
お泊りの時には自分の枕を持っていく
周囲の子どもが暴れてホコリがたつ場合は、部屋の変更も考慮してもらう
など、先生と相談して最善の策を考えておく。
・お泊りの時になると必ず発作がある人は、その時だけステロイドの吸入量を増加させることも考える。
・発作が起きた場合に備えて、気管支拡張薬、健康保険証、日頃の具合を書いた書類も持っていく。
3.災害時の準備
もしものときに備えて、必要なものをあらかじめまとめておくようにしましょう。
4.スポーツについて
体育でかけっこをすると時々発作が起こるのは、まだ空気の通り道(気管や気管支)のアレルギー(アレルギー炎症)が十分にコントロールされていないと思われます
お薬で十分にコントロールして、健康な子どもと同じように運動ができるようにして下さい。
運動を制限してはいけません。
発作が運動で起きるならば、運動前に気管支拡張薬を使用しましょう。
運動の種類がランニング、スポーツテストなど、タイムを競う時は発作が起きやすいので、うまく予防薬を使いましょう。
また、運動で発作が起きやすいのは、低温で乾いた空気を吸入したときと言われています。
その点、水泳は周囲の湿度がかなりあり、発作が起こりにくいスポーツです。
また、全身運動で体の訓練には最適です。
ただし、プールの水の塩素が濃い場合は問題となる場合もあります。
5.季節の変わり目に発作を起こしたときの対処方法について
いつもそうであるならば、その時期の少し前からお薬を変えるか、一剤増やして予防することが大切です。
抗ロイコトリエン薬は季節の変わり目の発作を予防することが報告されています。
また、その時期だけ吸入ステロイドの量を増す方法をとる場合もあります。
事前にかかりつけの先生に相談しておきましょう。
6、喘息日記について
喘息日記には、毎日の喘息の症状、アレルギー症状や風邪の症状などを記録していきます。
医療機関を受診するときに、医師に見せて喘息の経過や薬が効いているかなどの情報を伝えて、適切な対策を取るのに役立ちます。
まとめ
小児喘息は治療に時間がかかり、いつ起こるかわからない発作に対してストレスもたまりがちになります。
発作が起きた時の備えがしっかりできていれば、そのストレスも軽減され、発作が起きた時の症状の重症化も防ぐことができると考えられます。
家族ができるのは環境整備と医師との連携です。
環境整備は毎日の努力が必要であり、忙しいとつい後回しになってしまうかもしれませんが、できる範囲で頑張ってください。
子供も親もストレスをためることなく喘息の予防ができると良いですね。