更年期は、更年期障害の症状が現れるだけでなく、女性ホルモンの減少や免疫力の低下などによりさまざまな病気にかかりやすくなる時期でもあります。
それまではあまり病気にかかっていない人でも、体調の変化を感じることが多くなってきます。
何かいつもと違うような気がする、体がだるい、熱っぽいなど、体調の変化に気が付いたら、経過に細心の注意を払い、症状が悪化するようなら専門医に相談しましょう。
ここでは、更年期にかかりやすい病気について、エストロゲンが減少してかかる病気、気をつけたい成人病、更年期以降にかかりやすいがん、がん以外の病気について説明していきます。
更年期にエストロゲンが減少してかかる病気は?
更年期と言われている45歳ぐらいからエストロゲンが減少し、身体に様々な不調が起こり始めます。
以下に、エストロゲンが減少したために起こる症状について説明します。
1.骨粗鬆症
骨粗鬆症とは、全体的に骨の成分が減少し、骨折しやすくなった状態を言います。
エストロゲンが減少してカルシウムやたんぱく質が不足してしまい、骨がもろくスカスカな状態になってしまう病気です。
骨粗鬆症が重症化すると、すぐに骨折するなどの問題を引き起こします。
更年期になって腰や背中が痛くなったときには骨粗鬆症の疑いがあるので、骨密度を測定する必要があります。
痛みなどの自覚症状がなくても、更年期になると骨密度が減っている心配があるので、骨密度を測定しておくことをおすすめします。
それによって自分の骨の状態がわかり、早めに対策を講じることができます。
2.繊維筋痛症
患者の約9割が40~50歳代の更年期を過ぎた女性がかかる原因不明の病気で、痺れやこわばり、倦怠感、頭痛などの症状が現れます。
個人差もありますが、朝起き上がれない程の全身の痛みが3か月以上も続く事もある怖い病気です。
少しでも違和感があるようでしたら早目に医師の診断を受け、症状の緩和に努めるようにしましょう。
更年期に気をつけたい成人病は?
更年期に気を付けたい成人病には、骨粗鬆症、高脂血症、高血圧、動脈硬化、糖尿病などがあります。
1.骨粗鬆症 → 更年期にエストロゲンが減少してかかる病気とは?参照
2.高脂血症
高脂血症は、血液中の脂質が異常に多い状態の事を言います。
更年期に高脂血症になりやすいのは、エストロゲンが急激に減少するためだと言われています。
血液中には脂質として、中性脂肪、コレステロール、リン脂質、脂肪酸などがありますが、この中で特に高脂血症に関連するのは、コレステロールと中性脂肪です。
3.高血圧
高血圧は、最大血圧が140mmHg以上、または、最小血圧が90mmHg以上の場合には治療が必要と考えられています。
更年期以降はホルモンバランスの乱れから血圧の変動が起こりやすくなり、高血圧にもなりやすくなります。
頭痛や動悸、めまいなどは高血圧のサインです。
同時に女性は閉経以降肥満傾向にあるため、高血圧のリスクを高める要因にもなります。
高血圧になると、まず気を付けなければならないのが日常生活です。
高血圧の方には、肥満の方や血糖値が高めの方、血液中の脂肪過多の方が多いのが特徴です。
4.動脈硬化
動脈硬化は、動脈が硬くなったり、もろくなったりする状態で、血管の老化現象です。
閉経後、血管の内膜に悪玉コレステロールがついて狭くなってしまいやすくなるために起こります。
動脈硬化は、自覚症状がない状態で徐々に血管を老化させていきます。
動脈硬化が進むと胸の圧迫感や息切れ、動悸といった症状が出るようになります。
心臓の動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や狭心症が起こります。
脳の動脈硬化の場合にはめまい、手足のしびれ、耳鳴りといった症状が出てきます。
閉経前後から血圧や悪玉コレステロールには注意をはらうようにしましょう。
5.糖尿病
糖尿病は、血糖値と呼ばれている血液中のブドウ糖濃度が増えて、体に様々な障害が起きる病気です。
エストロゲンの減少が原因で、高血糖を招き、高血糖が続くと糖尿病に至ります。
そのため、エストロゲンが減ってしまう更年期が、糖尿病のきっかけ、原因になります。
更年期以降にかかりやすいがんは?
更年期はホルモンバランスの変動が大きいため、免疫力も低下しており、がんになりやすい時期でもあります。
また、50代までは代謝も良い状態なので、がんの進行が早く、気づいた時には手遅れ状態になっている場合も少なくありません。
どの部分のがんも、初期段階では更年期障害の症状であるダルさを感じることが多いため、発見が遅れてしまう場合があります。
特に更年期以降にかかりやすいがんとしては、子宮体がん、乳がん、卵巣がんなどがあります。
1.子宮体がん
子宮体がんは、エストロゲンが大きく関わっていると考えられています。
発生の割合をみると、子宮頸がんは40代後半が多いのですが、子宮体がんは50代後半で閉経後の場合が多いようです。
2.乳がん
乳がんは、乳房内の乳腺に起きるがんで、エストロゲンが大きく関わっており、エストロゲンの影響を受ける期間が長ければ長いほど、がんの発症リスクが高くなると考えられています。
なので、乳がんを発症する割合をみてみると、若い人よりも40代後半から50代にかけてが多くなっています。
その年代が、ちょうど更年期の時期と重なっているのです。
3.卵巣がん
卵巣がんは、女性であればどの年代にもみられる病気です。
中には10代やそれ以前にも発症する人がいますが、もっとも多いのは40~50代です。
卵巣がんのうち約半分を占める「表層上皮性がん」は、40~50代の女性が多く発症し、特にピークとなるのが50代前半の閉経前後といわれています。
更年期以降にかかりやすいがん以外の病気は?
がん以外にも、卵巣膿腫、子宮筋腫、子宮下垂や子宮脱、バセドウ氏病、膀胱炎、萎縮性膣炎(老人性膣炎)などがあげられます。
中には自覚症状があまりない病気もありますが、ちょっとでも不調を感じたら、面倒がらずに病院で検査するようにしてください。
まとめ
更年期を迎えると、女性の体は大きく変わってしまいます。
エストロゲンの減少による骨粗鬆症、免疫力の低下によるがん、また成人病などさまざまな病気にもかかりやすくなる時期でもあります。
更年期は女性にとって自分のからだをいたわる大事な時期だと考えて、生活を見直してみることが必要です。
胃腸に負担をかけない食事を摂ったり、適度な運動をしたり、飲み過ぎや食べ過ぎなどをやめるなど、これまでの生活習慣を改善していきましょう。