子供は急性中耳炎やアレルギーなど、耳鼻科にお世話になることが多いですね。
ここでは、乳幼児がかかりやすい耳の病気の症状と治療法について解説します。
乳幼児がかかりやすい耳の病気
●急性中耳炎
1.急性中耳炎ってどんな病気?
鼓膜の奥の中耳という腔(中耳腔)に細菌やウイルスが入って炎症を起こしたものです。
炎症があるため痛みを伴います。
重症化すると中耳に膿がたまり鼓膜がパンパンに腫れたり赤くなったりします。
3歳くらいまでは抵抗力が弱く頻回に繰り返すことがあります。(反復性中耳炎)
2.どうしておきるの?
風邪を引いたときに同時におきることが多いです。
中耳腔と鼻は耳管という管でつながっていて、風邪などで鼻やのどの細菌が耳管を通って中耳腔に入り増殖して発症します。
お風呂などで水が耳に入って中耳炎にならないか心配する方も多いのですが、耳の穴(外耳道)に水が入っても中耳との間には鼓膜という丈夫な膜があるため中耳腔には水は入らないので、中耳炎にはなりません。
3.どんな症状があるの?
中耳腔に炎症を起こすため耳痛が起こります。
また中耳腔に膿がたまると鼓膜や振動をキャッチする骨の動きが悪くなり、奥に音がうまく伝わらなって聞こえにくくなります。
また膿がたまりすぎると鼓膜がそれに耐え切れず、裂けて中の膿が流れ出てきます(みみだれ)。
小さいお子さんの場合は、不機嫌、耳をしきりに触るなどがあります。
4.どんな人に多いの?
子供に多い病気ですが、特に以下の条件の子供がなりやすく、また繰り返しやすい傾向があります。
☆なりやすくなる条件と対策
① 家族の風邪
乳幼児はまだ免疫が十分発達していないため風邪などにかかりやすく、風邪から急性中耳炎にかかってしまう。
⇒家族の手洗いやうがいうをこまめに行う。(特に上の兄弟たち)
② 哺乳の姿勢
乳児は中耳腔と上咽頭をつなぐ耳管という管が、大人に比べて鼻や咽喉の細菌が逆流しやすい形になっています。
そのため哺乳の際横になっていると、飲んだミルクがそのまま逆流して中耳に入ってしまい、中耳炎の原因となることがあります。
⇒哺乳の姿勢は少し立てて行う。
③ 集団保育
保育園で中耳炎の菌をもらってしまう。(その菌は抗生剤に耐性を持っていることが多い)
⇒帰宅後できるだけ手洗い、うがいをしっかり行う。
④ 鼻すすり
鼻すすりが癖になっていると中耳腔が陰圧になって、上咽頭の細菌が中耳腔に入りやすくなってしまう。
⇒鼻すすりの癖をやめさせ、鼻かみの仕方を教える(片方ずつやさしく行う)。
⑤ 水泳
プールの水が鼻から入って、その塩素が耳管を通って中耳腔に入り中耳炎の原因になるといわれています。
特に風邪のときは要注意です。
⇒風邪のときの水泳は止めましょう。
5.どんな治療をするの?
・比較的軽症の場合は抗生剤(細菌を殺す薬)を用います。
・痛みに対しては、痛み止めの飲みぐすりや坐薬でおさえます。
・抗生剤が効かない場合や中等症から重症例には鼓膜切開を行います。
これは鼓膜切開した穴から吸引して、中耳腔にたまっている膿を出して病原菌を減らしたり、中耳腔を換気して腔内の粘膜の状態を改善するのが目的です。
鼓膜切開であけた穴はだいたい3,4日から1,2週間くらいで閉じてしまいます。
・しばらくその穴を維持する必要がある場合は、その穴にチューブを挟み込みます(鼓膜チューブ留置)。
鼓膜切開、鼓膜チューブ留置は通常局所麻酔をして行いますが、小さいお子さんの場合、怖がって動くと危険ですから、鼓膜切開を避けるか安全のため全身麻酔下にて行うことが多いです。
・近年中耳炎を起こす細菌が抗生剤に対して強くなってきており、抗生剤が効きにくくなっています。
そのため、小さいお子さんなどの重症例も増えています。
場合によっては入院して抗生剤の点滴を必要とすることもあります。
●反復性中耳炎
1.反復性中耳炎はどんな病気?
短い間に何度も繰り返す中耳炎で、薬を飲んだり切開して排膿しても風邪をひくと何度も繰り返す中耳炎です。
多くは乳幼児におこり、下記の条件の子どもに多い
①乳児期より保育園に通っている、
②母乳期間が短かった
2.治療方法は?
原因菌が抗生剤の効きにくい耐性菌であることが多く、薬が効きにくいため鼓膜切開が必要なことが多い。
それでもなかなかコントロールが難しい場合は、チューブを留置して持続的に膿を出し、換気します。
チューブは大体自然に外れてくるまで置いておくことが多い。
●滲出性中耳炎
1.滲出性中耳炎はどんな病気?
鼓膜の奥の中耳腔と呼ばれる腔に液体がたまる中耳炎です。
中耳腔に液体がたまると鼓膜や耳小骨の動きが悪くなります。
すると外耳道を伝ってきた音が鼓膜、耳小骨そして内耳へきちんと伝わらなくなり、そのため聞こえが悪くなります。
2.どんな症状が出るの?
滲出液という液体が中耳腔にたまり、痛みはありませんが、聞こえが悪くなったり耳が詰まった感じがしたり耳鳴りがしたりします。
特に小さいお子さんは自分から症状を訴えることは少ないので、下記の様子があれば一度耳鼻咽喉科での診察を受けるようにしてください。
・機嫌が悪い(乳児)
・ミルクの飲みが悪い(乳児)
・しきりに耳を触る
・呼んでも返事をしないことが多い
・テレビの音を大きくするようになったなどありましたら一度耳鼻咽喉科での診察を受けられたほうがよいかと思います。
3.放っておくとどうなるの?
液体が中耳腔に貯まっているため、鼓膜や耳小骨の動きが悪くなり難聴気味になっています。
そのため、先生の話がよく聞こえず授業中に落ち着きが無かったり成績が落ちたりします。
さらに放置すると、難聴が残ったり、鼓膜が奥にくっついてしまう癒着性中耳炎などの慢性中耳炎という非常に厄介な中耳炎になってしまうことがあります。
4.治療はどんなことをするの?
そのときの状態にあわせて治療を行います。
① 中耳への処置
まず中耳腔に貯留液があれば鼓膜に小さい穴を開けて、たまっている液を吸引除去するのが原則です。
(ただ比較的初期の段階でしたらお薬のみで治る場合もあり)
この穴は小さいため大体数日ぐらいで自然に閉じてしまいます。
② 鼻やのどへの処置
滲出性中耳炎は耳だけではなく鼻やのどの病気の治療も必要です。
慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、かぜなどがあると耳管の周囲に鼻汁がたまったり、粘膜が悪くなったりして耳管の空気の通りが悪くなります。
そのため鼻内をしっかり清掃しネブライザーなどで粘膜の状態を改善します。
③ アデノイド切除
鼻の奥、のどの上方にアデノイドというリンパ組織があります。
アデノイドは耳管をふさぐことがあるため中耳炎になりやすくなります。
またアデノイドが細菌の巣になって、増殖した細菌が耳管経由で中耳炎を起こすことがあります。
それに対してはアデノイド切除を必要とする場合があります。
☆滲出性中耳炎は再発しやすく、しかもなかなか治りにくいのが特徴です。
治療期間は数ヶ月から数年にわたることもあり、治療には根気強さが必要です。
しかし、大人になって難聴や慢性中耳炎などにならないためにも、早期に発見して根気強く治療を続けることがなにより大切です。
まとめ
耳の病気は、始めは軽い症状であっても、ほおっておくと重大なことになる場合があります。
軽いうちに診察を受けて治療を始めれば早く完治します。
お母さんも最低限の知識を持っていれば、早期に適切な対応ができますね。
お子さんの耳の健康はお母さんが守ってあげましょう。
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