更年期の女性の皆さんは、ご自分の骨の状態を把握していますか。
骨粗鬆症の原因はさまざまですが、特に閉経後の女性は骨の密度が低下するリスクが高いと考えられています。
実際に70歳以降の女性の2人に1人は骨粗鬆症といわれています。
ここでは、閉経後の女性はなぜ骨粗鬆症になりやすいのか、どのようにして起こるのかを解説していきます。
また、骨密度の低下を防ぐ三つの方法を紹介します。
骨粗鬆症とはどんな病気?
骨粗鬆症とは、骨の密度が粗くスカスカになった状態のことを言います。
じつは、骨は毎日生まれ変わっていて、古い骨を溶かして(骨吸収)新しい骨をつくる(骨形成)ことで、丈夫な骨を維持しています。
しかし、骨代謝がバランスよく働くのは18歳がピークといわれ、その後は加齢と共に骨代謝の機能は衰えていきます。
新しくつくられる骨の量よりも溶かされる骨の量のほうが多いと、骨が次第に細くなり切れていくのです。
この状態が進むと骨の中がスカスカの状態となり、骨粗鬆症となってしまいます。
閉経と骨粗鬆症の関係は?
女性の骨の密度は卵巣機能の状態に比例するといわれています。
閉経後は、卵巣機能が低下し、それが女性ホルモンの減少につながります。
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。
そのうち、エストロゲンは女性らしさを保つホルモンといわれていますが、他にも骨密度を維持する効果があるといわれています。
骨密度を維持するためには、古い骨を破壊するはたらきである骨吸収と新しい骨を作るはたらきである骨形成のバランスが保たれている必要があります。
エストロゲンは、そのうちの骨吸収を抑制する作用があるといわれています。
そのため、閉経後のエストロゲン減少に伴って骨吸収がすすみ、骨の密度が低下し骨粗鬆症になると考えられています。
骨粗鬆症になって骨がもろくなると、ちょっとしたことで骨折してしまうことがあります。
骨折は、特に手首の骨や背骨、足のつけ根の骨に起こりやすく、尻もちをついたり、手を軽くついただけで骨折することがあるので注意が必要です。
骨密度の低下を防ぐには?
骨密度の低下を防ぐ方法には、食事療法と運動、日光浴の三つの方法があります。
1.骨密度を低下させない食事療法
栄養やカロリーのバランスがよい食事を規則的に摂るのが、食事療法の基本です。
・カルシウムとビタミンDを同時に摂ると、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。
カルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂りましょう。
・高齢になると、同じものばかり食べたり、小食になったりして、どうしてもタンパク質の摂取量は不足しがちです。
タンパク質の摂取量が少ないと骨密度の低下がより大きくなるので、意識して摂取しましょう。
以下に、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを豊富に含む食材を紹介しますので、これらを積極的に摂るようにしてください。
♦カルシウム
牛乳・乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、チンゲン菜、大豆製品など
※ 骨粗しょう症や骨折予防のためのカルシウムの摂取推奨量は、1日700~800㎎です。
♦ビタミンD
サケ、ウナギ、サンマ、メカジキ、イサキ、カレイ、シイタケ、キクラゲ、卵など
♦ビタミンK
納豆、ホウレン草、小松菜、ニラ、ブロッコリー、サニーレタス、キャベツなど
(注)控えめにしたい食品、避けたい嗜好品など
・スナック菓子、インスタント食品に多く含まれるリン酸塩はカルシウムの吸収を悪くします。
また、これらの食品には塩分も多く含まれており、塩分を摂りすぎるとカルシウムが尿に出てしまいます。
できるだけ食べるのを控えましょう。
・アルコールの飲み過ぎ
大量にアルコールを飲む人の骨量を調べてみると、骨量が低いという結果が出ています。
極端なケースとして、何も食べない(栄養が低い状態)で、アルコールばかり飲んでいる人に多いようです。
アルコールは適量にして、できればカルシウムが多く含まれる食材をつかった料理を、一緒に食べるようにしましょう。
・カフェインを多く含むコーヒー、紅茶の飲み過ぎ
コーヒーの中に含まれるカフェインには、尿を出す利尿作用があるので、あまりたくさんコーヒーを飲み過ぎると、尿と一緒にカルシウムも排出されてしまいます。
ミルクを入れてカフェオレにするなど、カルシウムを補給しながら飲めば、骨への影響を最小限に抑えることができます。
なお、同じカフェインを含む飲み物でも、紅茶や緑茶は骨粗鬆症を予防する効果があるようです。
・タバコ
タバコは、喫煙する人と、喫煙しない人とでは、骨量に大きな差があることがわかっています。
女性の場合、閉経まで毎日タバコを1箱吸うと、5~10%骨量が低下したデーターもあります。
また、年齢に関係なく、 若い女性でも、たばこを吸う人は吸わない人に比べると、骨量が低くなっています。
2.骨を強くする運動
ここでは家の中でも手軽に行うことができて、骨密度低下防止に効果的な運動を紹介します。
① 片脚立ち
フラミンゴのように片脚で立ちます。
不安な方は壁やテーブルにつかまりながら行ってもかまいません。
体重を片脚に乗せることで、両脚立ちの倍の負荷を与えることができ、骨を強くする効果があります。
バランス感覚が鍛えられるので転倒予防にもなります。
② 背筋を伸ばすストレッチ
余裕のあるときはストレッチも追加しましょう
・ふくらはぎとアキレス腱のストレッチ
壁に手をついて、体を支えながらふくらはぎとアキレス腱を伸ばします。
(1)前に出した方の脚の膝を曲げて体重をかけていき、後ろの方の脚のふくらはぎを伸ばします。
このとき、後ろに引いた足のかかとは床につけたままで浮かせないように注意します。
(2)後ろの方の脚の膝を曲げ、アキレス腱を伸ばします。
このときも、後ろに引いた足のかかとは床につけたままで浮かせないようにします。
片脚30~40秒ずつを左右交互に行いましょう。
・肩のストレッチ
(1) 壁から20~30cm離れて立ち、壁に手をつけて両手をできるだけ上の方にのばします。
(2) イスに座って頭のうしろで手を組み、両肘をできるだけうしろのほうに引き、胸を開きます。
3.日光浴で骨密度を上げる
カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線を浴びることで体内でもつくられます。
夏の直射日光を長時間浴びることは、皮膚が赤くなるなどダメージにつながりますが、適度な日光浴は骨の健康に役立ちます。
冬であれば30分~1時間程度散歩に出かけたり、夏であれば暑さを避けて木陰で30分程度過ごすだけで十分です。
積極的に外出する機会をつくって、上手に紫外線と付き合っていきましょう。
まとめ
閉経後骨粗鬆症は、骨折を起こす前に予防することが大切です。
そのためには、食事療法や運動療法を基本として、場合によっては薬物治療も並行して行い、骨強度を高めていくことが重要です。
また、骨粗鬆症かどうかの判断は自分では難しいため、心配な時には医師に相談するようにしましょう。
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